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取材/文 九州男児永野
 NCネットワークチャイナ深圳事務所 (全6回)
第三回
情報流出を喜べ! すべての情報は公開すべし!
--情報公開の在り方 --
工場経営において、誰もが判断に悩む「どこまで情報を公開すべきか」という問題。「顧客情報」や「財務情報」などを「どこまで中国スタッフへ開示するか?」に関しては、会社に与える影響を慎重に考慮しながら経営の舵取りを行わなければいけない。「万一大切な情報が外部に漏えい・流用されたら…」などの不安から意図的に制限をつけているのではないだろうか?

しかし、「これこそが諸悪の根源。情報規制とは、会社はあなたを信頼していませんと宣言することと同じ」と、SOLIDの原田総経理は説明する。何事も「欲するならば、先ず与えよ」の精神で、自らが進んで情報開示しなければ、信頼は築けないのである。「そうは言っても、すべてが外部に筒抜けになったら困る」と思った方は、先ず社員との信頼関係を築くことから始められてはいかがだろうか。「信頼関係を築く方法」については過去2回の連載を参考にしていただきたい。

~SOLID流情報公開~

原田氏が工場見学者へ一番に伝える言葉がある。「SOLIDに秘密はありません。写真は自由。聞きたいことがあればすべてお教えします」。その言葉の通り、SOLIDには何一つ秘密はない。「財務管理方法」であっても例外は無い。企業のブラックボックスとも言える財務情報。見学時に、もし希望すれば、原田氏は臆することなく最新財務情報を見せてくれる。数十頁に渡る詳細なレポートだ。もちろんこれらの詳細レポートも農民出身ワーカー自ら作成したものだ。

なぜ、そこまで徹底するのか?その答えが原田式経営哲学のひとつ、「1%経営」にある。

「1%経営」とは1%の利益率を目指すということ。単にSOLIDの利益率が1%ということではなく、不景気でも、好景気でも毎年「1%」を狙って経営するという意味だ。(1%以上の利益は、株主、社員、お客様へ還元)。もし、あなたが毎年狙って1%の利益で経営をしてみろと言われたらどうか? 1%の利益なんて為替損益で簡単に吹き飛んでしまうこのご時世。ほとんどの方は、怖くてできないのではないだろうか。

「利益1%」を実現するには、予算組の段階でどれだけ正確な情報を把握できているかが問われる。普通の経営者であれば、「経営には何が起こるのか分らない。余裕を持たせよう」と思うだろう。そのため、単価設定1つとっても材料費などの価格変動を考慮し、1%以上の余裕を持たせるものだ。
写真①:購買品展示フロアー風景。中央には購買方針を掲示(簡略:取引に関し、コネ、賄賂、贈答は一切認めない。「高品質、適正価格提示、納期順守」を歓迎)。
しかし、SOLIDでは、あらゆる情報が正確な数字、未来予測によって徹底的に明確化されている。その証拠にSOLIDの棚卸精度は0.001%。どれだけ正確に管理されているかが分るはずだ。

ではなぜ、そこまで「1%」にこだわるのか? それは原田氏の経営プロフェッショナルとしての、飽くなきこだわりとプライドだ。プロの世界とは、一切の妥協を許さず究極を求める場所。つまり、アーティストとしての作品が「1%経営」なのだ。これを達成するためには、オーナー・社員・取引先・顧客との信頼関係がなければ成り立たない。

信頼関係を築くために「明確化・定義化」した条件の1つが「情報公開」であり、「1%経営」はその結果なのだ。

「信頼関係を築くための情報公開」について、ひとつ具体例をご説明しよう。

SOLIDはもちろん、サプライヤーにもすべての情報を開示している。つまり、サプライヤーは、SOLIDがいくらで売り、いくら利益を出したかを正確に把握することができるのだ! だからこそ、不況時は痛み分け、好況時にはしっかり利益還元するSOLIDを信頼している。そのため、値下げ要請にも「SOLIDばかり儲けて!」「内部保留は潤沢なくせに」など、サプライヤーに不信感を抱かせることが無い(みなさんも良く理解できるはず!)。これもすべての情報を公開しているからこそできることなのだ。
写真②:来訪サプライヤーとの商談風景。窓口女性が予め決められた項目をヒアリング。
写真③:購買に関する結果(来訪数・新規採用数・良否割合等)を毎月分析。これが基になり翌月の購買方針が決まる。一連の過程すべてを窓口女性1人で取り仕切る。
 ~その他情報公開例~

<昇進・昇給基準の公開>

昇進・昇給基準が不明確であれば、社員のやる気を失う。SOLIDではすべての基準を公開し、公平・公正な昇進・昇給を行っている。また、必要な知識、職務も明確に定義され、誰でも閲覧、勉強できる仕組みを設けることで、機会も公平・公正に与えている。

<購買情報の公開>

SOLIDを訪れて最初に、視線の先に強烈に広がる光景。それが2階フロアーに展示された購買品の数々だ(写真①)。「購買数量、現在の購買価格、目標価格、仕様」の情報を公開。サプライヤーの出入りは自由。どの企業に対しても、公平・公正な機会が与えられている。しかも、購買窓口は受付の女性が兼任。素人目線で、マニュアルに従い機械的にふるいにかけることで、購買担当の無駄と癒着を防止できるのだ。窓口女性は毎月の新規開拓、来訪企業状況、サプライヤー評価に分けてグラフ(写真③)で公開。その他、購買展示品の入れ替えを頻繁に行い、集客(サプライヤー)にも努めるという徹底ぶりだ。
※読者のみなさまへ
今後、連載「世界最強の工場経営」では、読者の皆さまが日頃の経営、当連載で感じた疑問・質問に対し、原田氏のコメントも交えながら本誌にて、ご紹介していきます。
ご質問こちらから 、件名に「世界最強の工場経営」と記載ください。

次回は、≪第四回 部下は見えても、部下には見えない。~マネージャーの心得①~≫をお送りします。

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