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取材/文 九州男児永野
 NCネットワークチャイナ深圳事務所 (全6回)
第六回
(人に)使われ、任され、使い、育て、譲る
--原田式経営哲学 --

とうとう最終回となった当連載、初めは日本人管理者向けにスタートした企画でしたが、ふたを開けてみると中国人管理者からの反響も同じくらい大きかったのには驚きました!

読者の皆さんも実感されたと思いますが、原田氏が経営において最もこだわったもの。それは利益でも品質でもなく「人間」。「品質には興味がない、なぜなら人質を上げれば品質は自然と上がる」という原田氏の持論こそが人種を超え、多くの方々に共感をもたらせた最大の理由であり、原田式経営哲学の真髄なのです。

読者の皆さんは、経営者、管理職、一般社員とそれぞれ肩書き、職務が違うことでしょう。それぞれの職責を果たすため、日々立ちはだかる壁を乗り越えようと、必死にもがき、奮闘されているのではないでしょうか。そんな時、原田氏だったらどう考えるか? そして、部下にはどう接したのか?

そこで最終回は、これまで原田氏がその実体験から生んだ言葉を紹介したい! あえて注釈はつけません。皆さんそれぞれの心で感じてください。

■ 人材育成 ~教育編~
・教育は手段、目的は成長
・教える前に、学ぶ理由を分からせる
・自立心が無いのは、目的を教えないから
・仕事を教えるのではなく、仕事の仕方を教えろ
・プラス思考は毎日の小さな出来事から
・教えるのではなく、育てる
・語り継ぐより、受け継ぐ教育

■ 人材育成 ~仕事のさせ方編~
・常に部下の自己実現とレベルUPを考えよ
・任せて、やらせて、フォローしろ
・部下には常に2ランク上の立場で仕事をさせろ
・文句は聞くな、意見や提案を聞け
・結果だけでなく、プロセスを評価してあげろ
・部下は公然の場で叱れ

■ マネジメント ~心構え編~
・共に働き、言行一致、率先模範で約束を守れ、 部下は自分の鏡である
・権力で人を動かすな、人の心をつかみ、人を使い、人を動かせ
・いざという時に行動し、信頼されろ、又困難な時こそネアカであれ
・自分は偉くなったのではない、リーダーとしての職責を得ただけだ

■ マネジメント ~手法編~
・育てる気持ちと許す気持ちがマネジメントの基本
・マネジメントの結果は感謝心と信頼関係に比例
・愛社精神は二の次、社員の自己成長を願え
・リーダーを学歴で求めるな
・経験的手法を使わずに、独自性を使え

■ 企業文化の作り方
・優秀・一般・駄目社員の明文化、定義化を
・短期運営型なら熟練者を、長期運営型なら素人を
・文盲社員を揃えるな
・人で組織を作らず、業務で組織を作れ
・組織参加の前に、自由とわがままを教えろ
・子供は長所で評価、大人は欠点で評価
・誉めるより、叱られて育つ環境つくりを
・失敗で伸びる企業体質づくりを


<原田氏が追い求めた経営理念>
素質の高い人を集め仕事を通して人を育て高効率・高品質・高報酬を目標に明るく自由闊達でお互いが感謝の心を持ち、夢と自主性に満ちた理想工場を作る。

SONY創設者の1人井深大氏が綴った<SONYの前身東京通信工業㈱設立の目的一条>
真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設

原田式経営哲学の基礎、それは入社時一緒に仕事をしたという、井深大氏の存在も大きかったことだろう。井深氏のDNAを受け継ぎ、「自由闊達且つ愉快な理想工場」が、約50年を経て再び、ここ中国深圳でも実現されたのだと言えるでしょう。

最後に皆さんにお伝えしなければならないことがあります。去る09年12月12日、SOLID総経理原田則夫氏が逝去されました(享年61歳)。約30年に渡った海外生活に終止符を打ち、晴れて日本で第二の人生をスタートさせる矢先だった原田氏。私が最後にお会いしたのは10月13日。その際、己に課した使命を全うできたという充実感と、引退後の計画について楽しそうに語られていた姿が今でも忘れられません。

「理想工場」のためには、決して妥協を許さなかった原田氏。その歯に衣着せぬ物言いと、行動から「奇人・変人」「来るな・帰れの原田」「野武士」など、付いたあだ名は数知れず。1年前、初めてこの企画をご説明した際、「こんなこと辞めた方が良い!」「この雑誌は面白くない」と、いきなり出鼻をくじかれ落ち込みながらもスタートした当連載でしたが、今思えば原田氏なりの温かいエールの言葉だったのだと思います。

今回の主題である、「使われ、任され、使い、育て、譲る」。

これは、原田氏が「理想の経営者」に必要なスキルとして、己の人生に課した標語です。

・20代は人に使われることを覚える。
・30代は信頼され仕事を任されるようになる。
・40代は部下を使うことを覚える。
・50代はこれまでの経験を生かし部下を育てる。
・60代は育てた部下に仕事を譲り引退する。

この己が描いた人生を見事に全うされた原田氏に、心より哀悼の意を表します。

最後に:

当連載を最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。これまで、多くの反響をいただいたのも、皆さんの描く理想工場のヒントが「SOLID」にあったからではないでしょうか。今後はそのヒントを基に「何をするか?」それが大切だと思います。

「モノづくり」を通じて「人づくり」ができる理想の工場、それは夢物語ではありません。

この連載を通じ、私も「理想は理想、実現するのは不可能」、「日本は、中国は、文化が、習慣が」という言い訳ができなくなりました。

「理想は実現できる」。これを自ら率先模範、有言実行で示してくれた原田氏。今後は、我々が自分たちのチカラで、自分たちの理想の実現に向けて今できることから始めなければならない。それこそが、原田氏が残してくれた大切なメッセージではないでしょうか。
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