日系企業の置かれた状態も深刻になっているのではないだろうか? 佐藤氏は「日系企業の撤退の背景は日本の親会社の経営不振、もしくは合弁パートナーとの軋轢など。経営が追い込まれて、という理由ではない」。日系企業は香港・台湾系企業などに比べ、労働集約型企業が少ないのがその理由だ。岩田氏は「日系企業においては、企業の再構築で最も多いのは合弁企業からの独資化。独資化への交渉がスムーズにいかないという悩みが多い」と言う。
マクロ的に中国進出企業をとりまく中国政府の動きを見てみると、およそ次のようになる。上海は1984年より外資の誘致を行い、90年代になって多くの日系企業が進出してきた。その間、わずか20年弱の間に会社法、独占禁止法、労働契約法といった企業の在り方や雇用の基本が法律として整えられた。進出企業側も2001年の中国WTO加盟を境に進出への考え方が変わり、華東地区で言えば「産業集積」、「顧客企業が多い」、「物流インフラが整備されている」といった理由で、上海市内から江蘇省の蘇州や無錫への展開が増えていった。
そしてここ数年、「最低賃金の上昇」「社会保障制度」などの労務問題、「所得税アップ」「増値税の免除の撤廃」などの税金問題、さらに保税扱いでの加工の難しさや、環境規制が重なり、この数カ月では為替も不安要素となり、進出製造業を悩ませている。進出企業が直面するこれらの問題の多くは、「以前は内資にしか許されていなかった事業が、外資でもできるようになるなどの規制緩和がある一方で、外資企業だけに与えられた特権が撤廃され、労務や税務などでの規制強化がされている」と佐藤氏は分析している。
岩田氏は「中国政府の方針は『5カ年計画』の中にあるので、そのメッセージを読み取ることが重要。70年代のオイルショック、80年代の円高、90年代の不況が日本の企業を苦しめたが、日本の企業はこれらを乗り越えてきた。これまでに培った知恵を活かしながら、技術力を追求していただきたい」と、在中日系企業にエールを送った。 |