愛知県を本拠に、極小ギアを中心とした超小型成形部品の金型製作から成形までを手掛けるSANSYUグループ。日本を始め、アメリカ、インドネシア、香港にも拠点を構える。その中核をなすのが山秀精密香港有限公司だ。
香港進出は1987年。金融都市として脚光を浴びる香港に無数の工場があった時代だ。SANSYUグループ初の海外拠点として設立された山秀精密香港有限公司も、その数ある成形工場の一つに過ぎなかった。しかし、その後21年間で同業者はすべて香港を去り、唯一ここだけが残った。地下鉄、ショッピングモール、マンションが立ち並ぶ工場周辺の様子も、時の流れを感じさせる。
「工場の最先端を走り続けたい。」そう語るのは、21年前、たった1人で香港に渡り、山秀精密香港有限公司を立ち上げた神谷宗克社長だ。その言葉の通り、ここを訪れた者なら誰もが先端的な工場に驚くという。しかし、あえて言うなれば、驚かされるのは「先端さ」にではなく「異端さ」だ。「無人工場」なのである。
文字通り、この工場には人を介さない仕組みが無数にある。その1つが成形機100台を、たった1台のパソコンで監視する集中監視システムだ。1台のパソコンだけで、稼働状況のほか、金型の生産・品質記録を10年以上もさかのぼることができる。もちろん、材料の充填、製品の取り出しもすべて自動化されており、理論的には生産工程に人はいらない。そのため、24時間、人の有無を問わず、年間12億個の部品を生産し続けられる。
通常、金型製作、成形(100台)、検査(年間12億個)、すべてを社内で請け負うとなると、少なくとも百人単位の人員が必要だ。しかし、ここには60人しかいない。いくら素晴らしい仕組みがあっても、動かす人間が優秀でなければならない。それを香港が可能にした。
「(自分にとって)工場は遊び場だったからね」と微笑む神谷氏。
当時は珍しかったNC機械のプログラミングをする母親、機械を動かす父親の背中を見ながら育った幼少時代。いつしか、自分もできるようになっていた。その経験が、工場の集中監視システム、自動化設備など、工場内の随所に生かされている。
工場兼オフィスの2階の棚には無数のマンガ本が並ぶ。神谷氏にとって、今もこの工場は夢が膨らむ「遊び場」であるに違いない。
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